小説「孤狼の血」
2022.04.23
作:柚月 裕子
この小説はずばり、警察とヤクザの話です。
ヤクザが出てきますが、位置づけはあくまで、「警察小説」とのことです。
この小説の何が凄いかって、何と言っても、この男くさい話を、女性作家が書いているということで
す。
女性が書いているからかもしれませんが、警察を特別に美的に描いていないし、同様に
ヤクザも美的には描いていません。あくまで、双方のある程度のリアル(本当のリアルを書くと、作者
の身に危険が及ぶ恐れがるとの噂)を淡々と描いています。これを読むと、ヤクザ同士の抗争のリアル
を、ある程度理解することができます。ヤクザも年がら年中、戦争をしたいわけではないのです。
舞台は、暴力団対策法施行前の、1980年代の広島を舞台に、ヤクザの抗争と、その間に入って
ヤクザを制御しようとする警察の話で、主人公は警察なりたての若手刑事で、大卒で現場の
経験があまりない日岡秀一。その若手刑事が、広島の暴力団対策課に配属され、そこでヤクザのような
刑事、大上章吾とコンビを組み、大上のやり方に嫌悪感を抱きながらも、やがて自分も大上のように
ヤクザまがいの刑事になっていく、というストーリーです。この小説には続きがあり、シリーズ物とな
っています。
ちなみにこの小説は、「仁義なき戦い」で有名な、「東映」制作で、若手刑事に松坂桃李、ヤクザの
ような刑事大上に役所広司という配役で映画化されています。実写化あるあるで、小説とは幾分内容が
ことなっていますが、この映画は、それはそれで面白かったと思います。最後の20分間程に、東映の魂
というか、
「クズはクズとして死ね!!」
といった主張のようなものを感じました。あくまでも私見です。
できれば小説と映画両方を観て楽しむ、という楽しみ方をしていただきたい作品です。
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